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68恋する警部

恋する警部 ~ Kissを100回~

【作品解説】神奈川県警キャリアの女刑事・一条みちる警部が、大阪府警の格下の平刑事・芹沢貴志に恋をして、戸惑いまくる二日間。

【登場人物】

 ・一条 みちる ‥‥‥‥神奈川県警山下署刑事課警部

・芹沢 貴志‥‥‥‥‥大阪府警西天満署刑事課巡査部長

・鍋島 勝也‥‥‥‥‥大阪府警西天満署刑事課巡査部長

・沙織 ‥‥‥‥‥‥‥一条の幼馴染み

・二宮 ‥‥‥‥‥‥‥神奈川県警山下署刑事課巡査

・柴山 ‥‥‥‥‥‥‥山下署の嘱託医師

その他、エキストラいろいろ。

おもしろくない

 仕事にやりがいは感じている。

 手応えだってある。

    私は警察官に向いている。

 子供の頃からずっと思っていたことだけど、最近ますます強く思う。

 天職だと思っている。

 そりゃ確かに、出張先の大阪では数多くの失態を演じてしまった。

 そのことでは、こちらに帰ってきてからも随分と面倒な後始末に丸三日も費やし、一段落ついたときはさすがにうんざりして、疲れ切った。

 それでもこの仕事には日々充実感がある。

  

 世間知らずのお嬢さんだとか、プライドしかない腰掛けのエリートだとか、くだらないことを言うやつはたくさんいるし、言わせておけばいい。

 そんなことでいちいち腹を立てることはただの無駄だと、遅ればせながらようやく分かった今は、前のような居心地の悪さもなくなった。

 でも何故だろう。

何が変わったというのだろう。

 ……ううん、何も変わってないはず。

 そう、つまりこの職場だ。

 何度も言うが、居心地は悪くない。

 ただ……おもしろくない。

 どこが?

 ……そう。

きっと、ここには彼らがいないから。

「みぃちゃん、それはきっと恋のせいよ」

 昨夜一緒に食事したとき、沙織(さおり)はまじめくさった顔でそう言ったあと、まるでその恋をしているのが自分であるかのように、その上品な丸顔をくしゃくしゃにして私に笑いかけた。

 幼稚園から高校までずっと同じ学校で、同級生と言うより幼馴染みと言う方がしっくりくる。

穏やかで純粋無垢で、おっとりとしているようで実はしっかり者で、ご両親でなくても自慢したくなるような娘さんだ。

負けず嫌いで気の強い私のことをどういうわけか気に入っているらしく、こんな大人になっても昔のままで付き合ってくれる。

 今は暇つぶしに出身大学で教授秘書をやっているけれど、そのうち日本人なら誰が聞いても知っている大企業の跡取り息子と結婚することが決まっている。

 自分で言うのも何だが、「そこそこのセレブ」であるうちの家なんかとは比べものにならない由緒正しき名家のお嬢さんだ。

「職場がおもしろくないってことが?

 どうつながるのよ」

 私は沙織に訊き返した。

「だって、みぃちゃんの新しい彼氏も警察官なんでしょ」

「その『新しい』っていうの、強調しないでくれる?

 なんだか男をとっかえひっかえしてる軽い女みたいだし」

 沙織はハッとした表情でその白い手を自分の口元に当てると、またすぐににこにこと笑って言った。

「ごめんごめん。

でもとにかく、その人がいないからよ、

みぃちゃんの今の職場に」

「前からいないけど」

「もう!

 理屈っぽいなぁみぃちゃんは。

だから東大なんか

行っちゃダメだって言ったのよ」

 沙織は今度はぷっと膨れた。

「何で今頃その話?

「しかも官僚なんて……知らないよみぃちゃん。

気をつけないと、

そのうち頭、コチコチになっちゃうよ」

 ……なんだか、面倒臭くなってきた。

「分かった分かった。

つまりあんたは、あたしが、彼のいた大阪と同じ状況を今の刑事課に求めてしまって、それでおもしろくないと思うようになったんだって、そう言いたいわけね?

「そうよ!

 それ以外考えられないじゃない」

「そうなのかしら……」

「だって、話を聞いてるだけでも刺激的だったもん。

空き地で犯人と格闘して足を怪我したり、土砂降りの中で殺人犯に襲われて、みぃちゃんがもうダメだ、って観念しそうになったらその彼が助けに来てくれたんでしょ。

まるで映画みたいじゃない」

「まあ、ね」

 私が同意すると、沙織はさらに目を輝かせて続けた。

「泥だらけになったり、びしょ濡れになったり……いかにも、現場でがむしゃらにやってます、って感じ。

それがみぃちゃんにはとっても新鮮だったのよ」

 嘘じゃないんだけど、なーんかすこーし気に障るなぁ。

「そういうこと、今までのみぃちゃんには無かったものね。

そりゃ、今までだって同じ所轄署にいたけど、意味が違うじゃん。

現場にいるのは一時的なもので、そのうち本庁に戻るんだもの。

次は桜田門かもって、ついこの前まで──」 そこで沙織は、何かひらめいた表情になった。

「そうだ、そう言えば前の彼も警察官だったね!

 忘れてた」

 !

 何でそこで思い出す?

 ねえ、何で?

「あ、でも、前の彼はみぃちゃんと同じキャリアだったね。

じゃ全然ダメじゃん」

 沙織は勝手に納得している。

「ダメって、何が」

「泥まみれ、濡れねずみの状況には縁遠いってことよ。

すなわち刺激とは無縁」

 そう言うと沙織はうんうんと頷きながら運ばれてきたデザートを口にした。

「みぃちゃんもついにそういう恋に落ちたってことね。

後先を考えない、情熱に身を任せた恋。

泥臭くっていいなぁ。

憧れちゃう」

 この無邪気さのせいで、ときどきこいつを無性に殴りたくなる。

「みぃちゃん、あたし応援するよ。

おまけにその彼氏、すごくハンサムなんでしょ。

いいなぁ~見てみたいッ」

 そう言うと沙織はジェラートを食べていたスプーンを握って嬉しそうに目をぎゅっと閉じ、すぐにパッと開いて言った。

「うーん!

 美味しいこれ。

ねぇねぇ、みぃちゃんも早く食べて

ごらんよ」

「……そう。

そうするわ」

 私は意味もなく笑った。

  刑事課のデスクに向かって捜査員の提出した報告書に判を押しながら、私は今朝からずっとこのことばかり考えている。

 仕事にやりがいを求めたとしても、楽しさまで求める必要はない。

 そんなことは前から分かっている。

 楽しく仕事がしたいんじゃない。

仕事とは元来、厳しいものだ。

しかもこの職業ならなおさらだ。

  ただ、うまく説明できないけど── おもしろくないのはいかがなものか、と思う。

 昨夜沙織はこうも言った。

「大阪では、そんな厳しい状況にいながら、すごくおもしろかったんだね」 

 あの無邪気さは癇に障るが、時にこんな言葉が出てくるから、彼女は私にとってかけがえのない友人なのだ。

「一条警部」

 声をかけられて振り返ると、一係の係長がデスクから言った。

「実は、大阪の件なんですが──」

「はい」

 まだ何かあるのか、と思う。

「お手数なんですが、警部が上げられた報告書、もう一度揃えておいていただけないでしょうかね」

 申し訳なさそうに眉を下げているが、忙しそうに扇子を動かしながらの態度に彼の本心が表れている。

「全部、ですか?

「ええ」

 係長は表情を変えない。

「本部宛てのものも?

「もちろん、それは写しでかまいませんよ」

「分かりました」

「申し訳ありませんね。

本当なら警部には、昨日の放火事件に当たっていただきたいんですが」

「いいえ。

報告書云々が無くても、私はどうやらそちらには不要のようですし」

「そんなことありませんよ」

 何を言うか。

大阪での一件のせいで、私はこのところできるだけ現場から外されるようになったことくらい、ちゃんと自覚している。

「なにしろ、本庁がしつこくてねぇ。

大阪とのプライドのぶつかり合いなんでしょうが、なかなかあの一件を収めようとしない。

そのせいで今日も大阪から一人、こっちに来るって話ですよ」

「大阪から?

 わざわざ?

「ええ、わざわざ」

 そんな呼び出しにのこのこ出向いて来るなんて、大阪府警本部にも暇なやつがいるものだ。

「監査というところは、どこも暇なんですね」

 私は溜め息をついて書類に判を押した。

「いえ、向こうから来るのは監査じゃありませんよ」

「じゃあどこから来るんです」

「そりゃ、この前あなたが行ってたところですよ」

「……西天満(にしてんま)署ですか?

 私は思わず声を上げて係長を見た。

係長は驚いたような顔をしていた。

「そうですよ」

 係長は頷くと手元にあったメモ用紙のようなものを見ながら言った。

「えっと……主任が来るみたいですな」

「ああ、あの主任ですか」

 私は島崎(しまざき)巡査部長の人なつっこい顔を思い浮かべた。

彼ともぶつかったけれど、本当にいい人だった。

と言うより、あの二週間、私が本当に嫌なヤツだったのだ。

 あの島崎主任に会えるのか。

楽しみがひとつできた。

「では警部、お願いしますね」

「分かりました」

 係長は席を立って部屋を出て行った。

ほんと、ここはおもしろくない。

適当に書類仕事をやっつけて、私は刑事課を出た。

どうせ飼い殺しのような状態だ。

少しの間なら、私がいつ、どこへ行こうと、気にする者なんかいない。

一階のロビーに下りた私は、女性用トイレの出入り口付近にある長椅子に腰を下ろし、上着のポケットから携帯電話を出した。

 最後に大阪から帰ってきて十日間、毎日のようにかけている番号にダイヤルして、辺りを見回しながら耳に当てた。

 島崎主任が今日、ここへくる目的を、彼から聞き出すためだ。

出ない。

と言うより、電源が落ちている。

 はいはい、毎度のことね。

 電話をポケットに戻し、両手を長椅子に置いて背筋を伸ばしながら、私はロビーを見渡した。

──「お互い、仕事の話は無しな」

──「いいわ」

 そう約束した。

 だからやっぱり、訊くのはよそう。

主任がここへ来る目的、それがどうしても知りたければ、ここでこうやって待ち伏せしておいて、本人をつかまえて訊けば済むことだ。

 それにしても、何時に来るんだろう。

係長に訊いておけばよかった。

 いくら何でもずっとこうしているわけにはいかないなと思っていると、玄関の自動ドアが開いて、一係の二宮(にのみや)という刑事が入ってきた。

 私は立ち上がり、二宮に向かって歩き出した。

「二宮くん」

 声をかけると、二宮は立ち止まって辺りを見回し、私を見つけてちょっと表情を曇らせた。

「そんなにがっかりすることないじゃない」私は笑顔で言った。

「いえ、そんなことは」

「一人?

「はい。

主任が先へ戻ってろって」

 二宮は俯き加減に答えた。

私より二つ三つ年上らしいから、二十八歳前後か。

彼と同じくらいかな。

「ちょっと時間ある?

 コーヒーごちそうするわ」

「え、なんですか」

 二宮は露骨に迷惑そうな顔をした。

少しは遠慮しろ、このモヤシ男。

「放火のことよ。

捜査状況」

「でも──」

「あたしには言うなって、箝口令でも敷かれてるの?

「いいえ、とんでもない」

 二宮はブン、と首を振ると、腕時計を見ながら諦めたように言った。

「……じゃあ、お言葉に甘えて」

「筋向かいの喫茶店に行きましょう」

 私は歩き出した。

ところが──

「いや、警部、どうせならボクに付き合ってもらえますか」

「どこか行きたいところでも?

「マクドナルドです」

「マクドナルド?

」私は思わず訊き返した。

「どうしてわざわざ?

「ちょっと、欲しいものがあるんで」

 そう言うと二宮は照れくさそうに笑った。

「いいですか?

「え、ええ、もちろん」

 私は曖昧に答えながら、彼とはまた別の意味で刑事には似つかわしくない目の前のモヤシ男を見つめた。

 署から歩いて十分ほどのところにあるマクドナルドに着くと、私は注文カウンターに並びながら二宮に訊いた。

「で、ご注文は?

「警部、まさか本当に奢ってもらおうなんて思ってませんよ。

ボクはボクで頼みますから、警部はお好きなのをどうぞ」

 二宮は言った。

意外にも爽やかな笑顔だった。

「でも、無理矢理誘ったのは私だし」

 二宮は顔の前で手を振った。

「仕事なんだから、割り勘が基本です」

 結局、二宮はこの態度を崩さず、自分で支払った。

 先に注文と支払いを済ませ、アイスコーヒーひとつを前に彼を待っている私のテーブルまでやってくると、二宮は運んできたトレーを眺めながら満足そうに席に着いた。

「……これが欲しかったんだよな」

 二宮は独り言のように言った。

 私は彼の注文した商品を覗き込んだ。

普通のハンバーガーとポテト、それにコーラという、シンプルなものだった。

特に珍しいものはない。

「朝食抜きだったの?

 不思議に思って私が訊くと、二宮は首を振って一枚のカードを私に見せた。

「なに、それ?

「『ドラゴンサーガ』のカードです」

「ドラゴン……」復唱しかけて、私は事情を飲み込んだ。

「そうか、二宮くんはオタクだったわね」

「……はっきり言われると素直に首を縦に振りにくいですけど、そうです」

 二宮はなんとも複雑な顔をして頷くと、カードを持ったまま俯いた。

「それで、そのカード欲しさに?

「はい」

「カードだけ買えばいいじゃん」

「ここの企画の限定カードなんです。

今しか手に入らない」と、二宮はいささか興奮気味に言った。

「ふうん」

 申し訳ないが私は気のない返事をした。

確かに彼はこのカードに用があって私をここへ連れて来たのだろうが、もうその用は済んだ。

ところが、そもそも彼を誘ったのは私で、そっちの用はまだ完了していない。

「じゃあ、今度は私の番。

早速だけど、昨日の被害状況はどんな感じだった?

「民家の車庫に火を付けてました。

シャッターが焼けて、脇に置いてあったプランターも三つほど燃えてます」

 二宮はポテトを食べた。

「それから、ちょうどシャッターのすぐ内側に犬小屋があったんですが──そこで飼ってた犬が、入り込んできた煙を吸って死にました」

「あら、可哀想」

「家のご主人、男泣きしてましたよ」

「手口は?

 前の四件と同じ?

 ええ、と二宮は頷いた。

「ガソリンを染み込ませたタオルに、百円ライターね。

全部

現場に残ってたの?

」 コーラを飲んでいた二宮はさらに黙って頷いた。

「じゃあ今までのと同一犯か」

 そう言った私を、二宮は首を傾げて見つめてきた。

「違うとでも?

」私は訊いた。

「だって、今までの四件は隣の管内で起きてるんですよ」「それは、あっちでやりにくくなったからこっちに越えてきたってことじゃない?

 向こうじゃ警察や消防はもちろん、地元の消防団も連日警戒に当たってるわ」

「それだけじゃありません。

向こうで火を付けたのは全部、夜になると人気のなくなる建物ばかりです。

乾物倉庫に引っ越し屋の事務所、月極駐車場、洗車場と、人の住んでいる建物じゃない。

民家は今回が初めてですよ」

「じゃああなたは、今回の犯人は今までの四件の模倣犯だって言うの?

「だと思ってるんですけど。

手口が同じなのは、前の四件に対する報道が過熱になってますから、そこから知ることができます」

「そうね。

犯行日が決まって月曜の夜っていうのも報道で言ってるわね」

「……誤解を招くと困るんでここだけの話にしていただきたいんですが、前の四件のような愉快犯って、どこかボクらみたいな

──その、収集マニアって意味ですけど──それに似てるような気がするんですよ」

「どういうところが?

「犯人は、犯行というコレクションをしているんです」

 私は二宮の独特の意見に笑みを浮かべた。

「そういう意味では、収集家ね」

「ええ。

前の四件には、今言ったような一貫性がありますよね。

犯行日、手口、対象物。

どれも統一されている。

つまり、犯人はむやみに何でも集めてるわけじゃなくて、同じシリーズを集めてるんですよ。

マニアっていうのは、まさにそこに

こだわるんです」「昨日のはそのシリーズとは違うものだってこと?

「ええ。

そんなこと、許されませんから」

「でも、キミだって今日、ここへそのカードを買いに来たじゃない。

それってここ限定のものなんでしょ。

普段集めてるシリーズとは違うんじゃないの?

」 私は二宮のスーツの胸元を指さして言った。

さっき彼は『ドラゴンサーガ』のカードを内ポケットにしまっていたからだ。

「これはあくまで、『ドラゴンサーガ』側からの変化球です。

自分発信で変えたわけじゃない」二宮は左胸に手を当てて言った。

「だったらその変化球もまた、シリーズの番外作品として立派な収集対象になるんです」

「なるほどね……」 

 私はコーヒーのストローを噛みながら、二宮を見た。

このモヤシ男、思った以上に切れそうだ。

「それで、別犯人だっていう意見は誰かに言ってみた?

「ええ。

けさ主任に言いました。

一応聞いておく、とのことでした」

「同一犯説の方が有力、ってわけね」

 二宮は残念そうに頷いた。

「主任のことだから、即却下、とはしないでしょうけど」

「本当に疑問なら、何度も主張することね。

場合によっては一人で動く覚悟だってしておきなさい。

その場に流されるのだけはダメよ」「分かりました」「パートナーが必要になったら、あたしを使うといいわ」

「いえ、とんでもない」

「あたしみたいな厄介者とかかわるのは嫌?

 私はわざと笑顔で言った。

「そうじゃないですけど──警部はほら、聞くところによるとまだこの前の一件でお忙しいみたいですし」

「あら、今度は嫌味」

「違いますよ。

主任に聞きましたけど、今日だって大阪から誰か来るんでしょ?

「ちょうど良かった、そのことよ」私は思い出した。

「主任は、何時に来るか言ってなかった?

「え、もう来てるんじゃないですか」

「さっきあたしがあなたをロビーで捕まえるまでは、来てなかったわよ」

「それは分かってますけど」

 そう言うと二宮はコーラに入っていた氷を噛みながら腕時計を見た。

「主任の話では、昼前には来るって言ってたから、そろそろ着いてるんじゃないですか」

「うそ、それを早く言ってよ」

 私はトレーを持って立ち上がった。

「帰るわよ」

署に戻った私は、手洗いに行った二宮と別れ、刑事課のある二階へ戻った。

埃っぽい階段を上っていると、なにやら黄色い声ではしゃぐ三人の婦警が上から下りてきた。

三人は私に気付くとはしゃぐのをやめ、ぎこちない会釈をしながら下りていった。

私はそれに軽く答えた。

 通り過ぎざまに彼女たちの一人が、

「気取っちゃって。

悔しい」

 と言った。

何で悔しがられるのか分からなかったが、どうせいつものくだらない妬みだと思って聞き流した。

 刑事課の前まで来た私は、自然に腕時計を見た。

十一時四十分だった。

 島崎主任ともひさしぶりだ。

私はできるだけ明るい表情を作ると、ひとつ大きな深呼吸をしてドアを開けた。

「──あ、やっと帰ってきた」

 課長のデスク前に集まっていた数名の中から声がして、その連中が私に振り返った。

課長もゆっくりと顔を向けて私を見た。

「一条くん、どこへ行ってたんだい」

 山中(やまなか)刑事課長は言った。

「すいません、ちょっと所用で」私は頭を下げた。

「もう来られてるんですか?

」「来てるよ。

さっきからお待ちかねだ」

 そう答えたのは最初に発言した、垣内(かきうち)主任だ。

さっきまで二宮と同行していた人物である。

 「きみとは気が合いそうじゃないか」 課長がニッと笑った。

そして部屋の奥にある来客用ソファに向けて首を伸ばし、言った。

「芹沢さん、どうもお待たせしました」

 !

 なんだって────!

 

 おそるおそる振り返った私に、ゆっくりとソファから立ち上がった彼は、並んだデスクの間を悠然と通って私の前までくると、穏やかな声で言った。

「お久しぶりです、一条警部」

 そして彼は非の打ち所のない笑顔のまま私に会釈した。

 恥ずかしいことだが、私はこのとき驚きのあまり失神した。

信じられない

目が覚めた私は、そこが署の救護室だと気付くのに五秒を有した。

 ベッドに横たわり、、ブラウスのボタンを三つほど外され、そのすぐ上までタオルケットを掛けられていた。

 ゆっくりと首を動かしてそばの診察デスクに顔を向けようと

すると、わずかに頭痛を感じた。

「いた……」

「──あら、お目覚めね」

 デスクでカルテを書いていた柴山(しばやま)医師が、ちらりと私を見て言った。

「あの、わたし──」

 私が起きようとすると、柴山医師は手を止めて立ち上がり、私のところへ来た。

そして枕をひとつ余分にあてがってくれてから、私の腕をとって脈を測り始めた。

  

「軽い貧血のようね。

毎日ちゃんと食べてる?

 柴山医師は手元を見たまま言った。

署のすぐ隣にある総合病院の勤務医で、アルバイトでこの救護室に交代で詰めている三人の医師の一人だ。

 なかなかの美人で、年齢は私より五つほど上だったように思う。

「ちゃんと食べてます。

昨日だって、高いフレンチに行ってきました」私は言った。

「高いからって、栄養のバランスが完璧とは言えないわよ」 柴山医師は脈を測り終えると、今度はデスクの端に置いてあった血圧計をとってきた。

「みんな、びっくりしてたわよ。

ちょっとした騒ぎだったわ」「先生は呼ばれたんですか」

「ええ。

主任さんが血相替えてここへ飛び込んでこられて、慌てて駆けつけたのよ」「あたし──急に全然わからなくなっちゃって」

「お客さんが来たんだって?

 その人を見るなり、あんたひっくり返ったって」

 柴山医師はその時の様子を思い出しているらしく、小さく笑った。

 そうだ、彼だ。

原因はそこだった。

「……あの、その人、今どうしてるんでしょう」

 間抜けだと分かっていたが、私は訊いていた。

「お客さん?

 さあ」

 柴山医師は私の腕から血圧計を外しながら首を傾けた。

「あの人もびっくりしてたみたいで、倒れたあなたを抱きかかえるのにも深刻な表情だったけど」

 なにーっ!

 そんな恥ずかしいことになってたのか!

「それで、彼──あの人が私をここまで?

「違う違う。

担架を用意したから、そこに彼があなたを運んだのよ」

「……良かった」

 私は心底胸をなで下ろした。

「あの人、知り合い?

 デスクに戻ってカルテを書きながら、柴山医師は訊いてきた。

「知り合いって言うか……ええ、まあ、そうです」

 私は曖昧に答えた。

「刑事なんでしょ?

「ひと月ほど前、私が出張で大阪へ行ったんです。

その時一緒に捜査を」

「大阪の人なの?

「本人は違うみたいですよ。

大阪府警の刑事ではあるけど」

 私は答えながら、猛烈に居心地の悪さを感じていた。

今、ここで職場の人間と彼の話をするなんて、ほんのついさっきまでまるで想像していなかったことだ。

 まったく、あたしは何を喋ってるんだ?

「ふーん、一応知り合いなんだ……」

 柴山医師は独り言のように言うと椅子ごと振り返って私をじっと見た。

 なんだ、まだその話か──。

 

 突然、柴山医師は飛びかかるようにして私の両手を取った。

「紹介してっ!

「えええっ?

」 私は思わずのけぞった。

 「──な、な、なんですか──?

「だって、ものすごくいい男じゃない。

あれをほっとく手はないわよ」

 柴山医師はかなり興奮している。

「そんなこと言ったって……」

「紹介さえしてくれたら、あとは自分で何とかするから。

彼、いつまでこっちにいるの?

」 かなり興奮しているだけでなく、必死だった。

「知りませんけど」

 そう、こっちが知りたいわよ。

「今日帰るってことはないわよね?

「だから、知らないんです」

「そうよね……いいわ、分かった。

実はあたし、今から食事に

出るんだけど、帰ってきたら是非お願いね」

「紹介って言ったって、どうやって」

「適当に、なんでも言ってくれればいいから。

そこはうまくお願いするわ」

 そう言うと柴山医師は満足そうににっこりと笑っ

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